<さ行>
・自閉症言語の発達の遅れや、コミュニケーション能力や興味へのこだわり、行動等に特異な問題を抱える(障害が見られる)、
広汎性発達障害の一種。
単に「自閉症」と言う場合は、上記に加えて知的発達にも遅れのある「低機能自閉症」を指していることが大半である。
1943年に発見された当初、自閉症は「統合失調症の一症状」として扱われており、病名にその一症状を指す「自閉」という単語が使われたのもそのためである。
その後研究が進み、現在では
「先天性の脳機能障害」が原因であることがほぼ確実視されている。
従来の考えとして、自閉症のうち知的発達に遅れのないものを「高機能自閉症」
高機能自閉症の中で更に、言語発達に遅れのないものを「アスペルガー症候群」と分類するのが一つのやり方であったが、
実際、一人の患者をどこで線引きし、「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」のどちらで診断すればいいのかの判断は
専門の医師であっても難しく、また時に診断する医師によって病名が変わることもあった。
その揺らぎが、アスペルガー症候群の定義や概念自体の曖昧さにも繋がっていたことから、
DSM-5において、これらの定義を整理し一つの診断名として統合した「自閉スペクトラム症」という概念が生まれることになった。
・自閉スペクトラム症2013年に新たに制定されたDSM-5において、
それまでのDSM-4において「広汎性発達障害」と呼ばれてきた障害のカテゴリを整理統合して生まれた、新たな診断名。
具体的には、従来まで「広汎性発達障害」のサブカテゴリとして扱われてきた
・レット症候群
・小児期崩壊性障害
・自閉症
・高機能自閉症
・アスペルガー症候群
・特定不能の広汎性発達障害
の障害のうち、まず遺伝子疾患であることが明らかになったレット症候群を除外した上で、その他のサブカテゴリを廃止・削除し、
新たに「社会性の障害」と「常同性(こだわり)」の両方に問題があることを診断の基準に置いた「自閉スペクトラム症」として統合したものである。これにより、今後アスペルガー症候群は
「知的発達に遅れのない自閉スペクトラム症」として分類されることになり、
「アスペルガー症候群」という診断名も次第に消えていくものと見られている。
・社会性対人関係における情緒や性格、またそれらと結びついた思考や行動などの「人格」を形作る性質。
個人、あるいは集団での人間関係を円滑に維持し、社会生活を営んでいくためには欠かせないものとされる。
言葉の概念としては広く曖昧なもので、具体的にどのような能力を指すのかは研究者によっても違いはあるが、
一般的に言われるものとしては、
・他者の言葉や行動などの「反応」から、他者の気持ちを読み取って適切な行動を取れること
・集団の中で協調的に行動できること
・自身の置かれている立場や状況を判断して、適切な行動を取れること
・「仲間に入れてほしい」「仲間として認められたい」などの形で、他者と関わりたいという欲求を持つこと
・他者の気持ちを推し量って、思いやり、同情、共感などの気持ちで寄り添えること
などを指すことが多い。
最近では、これらの能力を一まとめにして「場の空気を読む力」と表すこともある。
これら「社会性」と称する能力に問題(障害)があり、日常生活において著しい困難を抱えていることが、
「アスペルガー症候群」及び「自閉スペクトラム症」の診断基準の一つとなっている。
・障害者手帳日本の場合、障害者手帳と呼ばれるものはそれぞれの障害の種類や部位に応じて以下の3種類に分かれている。
・身体の外部・内部に障害を抱えている方に対する
「身体障害者手帳」・知的発達が遅れている方に対する
「療育手帳」・うつ、統合失調症などの精神障害を抱えている方に対する
「精神障害者保健福祉手帳」発達障害は精神障害の一種として分類されており、症状に応じて
「精神障害者保健福祉手帳」の対象となる可能性がある。
精神障害者保健福祉手帳には、更に障害の程度に応じて1級、2級、3級の3つの等級があるが、
「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」の診断で手帳を取得する場合は、このうち一番下の3級に分類されることが多い。
精神障害者保健福祉手帳の3級を所有していることによって受けることのできる支援のうち、主なものとしては
・確定申告によって所得税、住民税、相続税等の税控除を受けられる。
・施設利用料の割引や公営住宅へ優先して入居できるなど、各種自治体が定めたサービスを受けることができる。
・携帯の使用料の割引や遊園地・テーマパークの入場料金の割引など、それぞれの民間事業者が定めたサービスを受けることができる
・ハローワークや発達障害者支援センターにおいて、適職診断やジョブコーチ等、各種の就職支援サービスを受けることができる。
・企業が一定の割合障害者を雇うことを義務付ける「法定雇用」の対象となることで、障害者枠で採用される可能性が生まれる
・厚生年金に加入している場合、条件次第で障害厚生年金3級(平成25年度で、年額最低583,900円)の受給対象となる可能性がある。
※精神障害者保健福祉手帳3級の場合は、国民年金に加入しているだけで受給対象となる障害基礎年金の対象には「ならない」
などが挙げられる。
なお、手帳は2年に1回更新する必要があり、更新のたびに等級の再判定が行われる。
また、本人の意思によって一度取得した手帳を返納することも可能である。
・障害者枠(障害者雇用)それぞれの企業が障害者を雇用するために設けている、障害者専用の就職の採用枠。
国が定めた「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)の中で、
企業に対し、その規模に応じて一定の割合だけ障害者を雇用するよう定められており、
定められた割合(2014年現在、56人以上を雇用している民間企業の場合、1.8%以上の障害者を雇わなければならない)を下回った企業に対しては罰金が科せられる、というルールがある。
そのために、企業によっては障害者手帳を所有している方のみを採用の対象とした
「障害者専用の求人」を出している企業が存在する。
ハローワークの一般の求人検索には出てこないが、窓口で申請すれば求人のリストを閲覧することができる。
あらかじめ障害者を雇用することを前提としての採用であるため、
就労に際して、各当事者の抱えている障害や病状に対する企業側の理解が比較的得やすい、というメリットがある。
ただし、その反面待遇としてはパート・契約社員などでの雇用が多く、給与水準も一般枠での就職に比べて低いことが大半である。
特に、発達障害の場合、多くの当事者の方が該当する「精神障害者保健福祉手帳3級」では、障害者年金の一方の柱である障害基礎年金を受給することができず、
もう一方の障害厚生年金についても、受給資格を満たすためには
・「初診日(その障害で初めて病院の診察を受けた日)に厚生年金に加入していなければならない」
・「既に収入が一定以上あると受給が認められない場合がある」などの制約があるため、「収入が低くても障害者年金で埋め合わせればいい」という手段を取れない場合が多い。
そのため、障害者年金の受給資格がない方や、家族に頼らず自立できるだけの収入が必要な方にとっては、
障害に対して配慮してもらえることを考慮しても、必ずしも障害者枠での就職がベストにならない場合があり、
それぞれの当事者が障害者枠で就職するか、一般枠で就職するかの判断を難しくする原因にもなっている。
・常同性同じ姿勢、行為、言葉などを長期間に渡り反復、持続すること。
この概念自体は「習慣」「趣味」などと呼び換えることができ、健常者の方々も多かれ少なかれ持っているものであるが、
自閉症やアスペルガー症候群の当事者の場合、
・行動を取る頻度や、行動に対して向ける集中力が異常なほどに高い。
・本人以外の視点から見た時に、それら姿勢、行為、言葉などの「行動」を繰り返すことに具体的な意味や理由を見出し辛いことがある。
・行う時間や過程、物の場所など、詳細に至るまで異常な正確さを求める。
・あらかじめ決めていた「儀式」や「日課」を行えなかったり、中身に些細な変化があっただけでひどく不安を覚え混乱したり、異常な拒否反応を取ったりする。
などといった、一般的な「習慣」と比較して特異な点が多く見られることが特徴であり、
特に
「同じ過程を踏んで同じ行動を取ることに異常にこだわる」「興味や関心を持ったことに対して、極端なまでに執着する」傾向が強い。
具体的な例としては、
・ドアの開け閉めや物の片づけなどの日常的な行動を、常に自分が決めた手順通りに行うことにひどくこだわる。
・学校の行き帰りに、いつも決めているルートが使えないとパニックを起こしてしまう。
・振り子など動くものを見続けたり、特定の場所をぐるぐる回ることを繰り返したりして、それを邪魔されると手が付けられないぐらい怒ってしまう
などが挙げられるが、こだわりの対象や程度は当事者によって大きく異なる。
また、成長や状況の変化によって、こだわりの対象が変わったり、こだわりが消失することもある。
これらの「常同性」によって取られる行動や、その行動を維持することに対する強いこだわりによって、日常生活において著しい困難を抱えていることが、
「アスペルガー症候群」及び「自閉スペクトラム症」の診断基準の一つとなっている
・ジョブコーチ障害者が就労するにあたって、「障害者本人に対しての支援」と「職場や雇用主に対しての支援」を行うことで、
障害者が円滑に就労することができるよう、職場内外の環境を整える者のこと。
「見た目として障害があるようには見えないが、実際の就労にあたって少なからず困難を抱えることが多い」
「障害の重さ軽さに大きな個人差があり、それぞれの症状に応じて対処の仕方が大きく変わる。」
という障害の特性から、主に発達障害者の就労支援として利用されることが多い。
具体的な支援の内容としては、
○障害者本人に対する支援
・人間関係や職場でのコミュニケーションを円滑に取るための支援
・仕事の効率を上げたり、ミスを減らすための支援
・生活リズムの改善や継続的な勤務など、基本的な労働習慣を作るための支援
○事業主に対する支援
・個々の障害に対する知識や特性を理解するための支援
・他の従業員との間における、コミュニケーションや関わり方などの助言や提案
・仕事の内容や、具体的な指導方法の助言や提案
○家族への支援
・障害者本人の職業生活を支えていくための助言
などが挙げられる。
障害者とそれぞれの状況に応じて支援計画を立てた上で、これらの支援を1カ月~7カ月の間継続的に行うとともに、
その支援期間が終了した後も、職場内で適切な支援が継続されるような環境を整えることがジョブコーチの目的である。
実際にジョブコーチを利用したい場合は、
・地域障害者職業センターや発達障害者支援センターに問い合わせる
・就職活動の中で、ハローワークを経由して依頼する
などの方法がある。
・ソーシャルスキルトレーニングソーシャルスキルとは「社会の中で普通に他人と交わり、共に生活していくために必要な能力」という意味で、「社会技能」とも訳される。
大多数の一般人、いわゆる「定型発達者」にとっては、特別な訓練を行わなくても周囲の教育や自身の成長などによって自然と会得できるものであるが、
その一方で、多くの発達障害者は定型発達者と同じような形で「自然と、空気を読むことで」社会性を成長させていくことは難しい。
そこで、これら苦手とする社会技能を訓練によって習得することで、
社会性を身に着けるための助けとするのが「ソーシャルスキルトレーニング」である。
トレーニングの方法には様々な種類があるが、基本の流れとしては、
1.ボトムアップ (トレーニングの対象となるスキルの確認。なぜそのスキルが必要で、身に着けることにとってどのような効果があるかを示す)
2.モデリング (スキルを習得する手本として正しい振る舞いを見せたり、間違った振る舞いを見せてどこが間違っているのかを指摘させる)
3.ロールプレイ (モデリングで学んだことを活かして、講師の前で実際に場面を設定してスキルを練習してみる。)
4.フィードバック (ロールプレイでの行動を振り返り、練習の結果適切な行動を取れたなら褒め、また不適切な行動であれば修正するよう指導する。)
5.ホームワーク (講師のいない場面でも、1~4までで学んだことを活かして自宅や学校、職場などで身近な人を相手に練習を行う)
6.一般化 (必要に応じて1~5までの指導・訓練を適宜繰り返すことで徐々にスキルを積み重ね、最終的には教えたスキルがどのような場面でも発揮できるようにする)
という形を取るのが一般的である。
実施にあたっては、専門の講師による指導が必要になるが、
最も重要なのは、「ソーシャルスキルを学びたい」「このスキルを身に着けたい」という、本人自身の意欲である。